【投稿】「死」に関する、ある哲学対話での一件について~その1~
画像はTwitterアカウント「How to Get to 哲学対話 ?」より |
活動停止中なんですけど、(たぶん)とっくに議論には乗り遅れてしまってますけど、あと他所様のことには基本口出ししたりしない性分なんですけど、あんまりだと思うので一言だけ。
ある哲学対話の催しで起きたという事件。
■【哲学対話×Dabel】Vol.41 テーマ:最高の死をデザインしたいか?
ネットでの反応を見ていると、この問題を「哲学対話」一般の方法論の問題として考えようとする向きが、大勢のように感じています。
確かにそうした議論が必要であると強く感じるところですが、しかしこの企画、そもそも「最高の死をデザインしたいか?」というテーマにて企画され、開催されたわけです。(※1)
こうしたテーマで一般に呼びかけてお話しを始めたら、差別意識の露呈やヘイトスピーチを招くことになるって、そんなの、火を見るより明らかなことではないですか?
「最高の死をデザインしたいか?」
この疑問文に対する回答を文法に従って考えるならば、「はい、デザインしたいです」あるいは「いいえ、デザインしたくありません」という具合になりますよね。
一方、「デザイン」とは、何事か物事に与えられる造形のことでしょう。
この問いかけは人の好悪、選好の問題を問うものであると考えるのが素直な受け取り方だと思います。
つまりこの質問は、ある種の美的感覚に関わることについて訊ねている、と考えるのが妥当なところではないでしょうか。
そしてそのことは、この質問文の主語である「最高の死」という言葉からも明らかだと思います。
「死」を「最高/最低」の両極で序列化させるこの疑問文は、「デザイン」の語と相俟って十中八九、死についての美的な感覚を論じさせるものとして受け取られるでしょう。
実際には、このテーマは美しい死(!)と、そうではない死について話をすることを要求するものとして機能すると言わざるを得ません。
だとすれば、このテーマで哲学対話を行うことは、予期せざる事故のようなものではなくて、当然に予見されるべき、極めて危険な行為であったのではないでしょうか?
しかも、この危険な行為を実際に行った(テーマを受けて、更にそれを補強する発言を行った)のは主催者の SHIOKO さんご本人であったというのに、謝罪文においては、何故ご自身がそのような思考回路に到ってしまったのか、全く考察が述べられていません。
一体 SHIOKO さんは、どうして「最高の死をデザインしたいか?」などというテーマを掲げて哲学対話を行おうと考えたのでしょうか?
問題を指摘された後、当初のご自身の考えは、どのように反省されたのでしょうか?
そのことを切開せずに、本件を総括することなど出来ないのではないかと、わたしは考えます。
それから、この企画とは別に、これと全く同様のテーマでの哲学対話が、過去に「こまば哲学カフェ」という枠組みでも行われていたことを知りました。
■こまば哲学カフェ【シリーズ:あの世とこの世の哲学対話 】 Vol.6:最高の死をデザインしたいか?
主催者の欄には、どちらも「How to Get to 哲学対話 ? SHIOKO
IDE」とありますから、上記一件と同じく、「How to Get to 哲学対話 ?」のSHIOKOさんが関係されたものだと思うのですが、こちらのページには、その他にも様々な人や機関の名前が掲載されています。
こちらの企画では、このような問題は起きなかったのでしょうか?
なんだか、とても心配です。
また、この様に多くの方が関わりながらも、「最高の死をデザインしたいか?」という、極めて危険なテーマにて対話の場を開催することを止められなかったことは、大きな問題ではありませんか?
「こまば哲学カフェ」は、東京大学大学院総合文化研究科・教養学部付属
共生のための国際哲学研究センター(UTCP)やP4E研究会の「協力」でこの企画を行ったと、上記のページには書かれています。
本件について、少なくともUTCPやP4E研究会は、その関与の有無や責任の所在を含めて説明をするべきではないのですか?
「哲学対話」の場における差別やヘイトスピーチの問題を、その方法論一般の問題として考えることは大変重要だと思いますが、今回の事態そのものは、実際はもっと具体的な人々の関与の在り方を見直すことで、より実効的に防止可能であったことではないのでしょうか?
このように苦言を表明したところで、一体誰にこの言葉が届くのかわからないとも感じますが、同様の趣旨での指摘が見受けられなかったこともあり、取り急ぎ問題意識を公にするものです。
文責 しばたはる(波止場てつがくカフェ)
※1 この催しは、「How to Get to
哲学対話」主宰SHIOKOの主催で、「【哲学対話×Dabel】Vol.41
テーマ:最高の死をデザインしたいか?」と題して行われた。なお、実施にあたっては音声通信アプリ「Dabel」を介し、オンライン上で行われたという。