【報告】第13回 <共謀>するって、どんなこと?
4月23日(日)の午後。高田馬場駅から明治通りを超えて、ちょうど早稲田通りの坂を下ったあたり。
第13回波戸場てつがくカフェは、西早稲田にある「Neccoカフェ」を会場に開催された。
「Neccoカフェ」は誰でも利用できる喫茶店である一方、「日本初の『大人の発達障害当事者による、大人の発達障害当事者のため』の常設の居場所」として、発達障害当事者により運営されている「AlternativeSpace」だ。(「大人(成人)の発達障害当事者のためのピアサポート
Necco(ネッコ) ホームページより)
実際の接客やカフェの運営も、発達障害当事者であるスタッフによって行われている。
自家焙煎のとても香りのよいコーヒーが、それもかなり割安な値段で味わえる、「隠れた」名店だ。
さて、今回のテーマは「<共謀>するって、どんなこと?」。
実はこの3月、当会は共謀罪設置法案について、会として反対の声明を発表した。
人と人とが集い言葉をかわす行為そのものをを罰しようとする共謀罪は、「対話の場」を実現していこうとする当会の試みそのものに根本的に対立している。
この法案が実現されれば、当会の活動は大変な困難にさらされるのではないか。
それが今回、反対声明(※)を発表した理由である。
※テロ等準備罪/共謀罪設置法案(組織犯罪処罰法等改正案)に反対する声明(2017.3.27 波戸場てつがくカフェ)
一方、このように個別の政治的課題について具体的な意見を表明するということは、率直に言って、「対話の場」をあらゆる人に開かれたものとして用意したいという当会の目論見を難しくするものでもあった。
人があらかじめ見当づけられた「結論」が導かれることなく、前提を設けずに他人の考えを聞き、自由に思考ができる場所をどのように実現できるか。
共謀罪法案について反対の意見を表明して行われた今回の催しは、ひとつの実験であったと言ってよい。
さて、対話がはじまって表明されたのは、やはり刑罰や法律に引き付けての考えであった。
- 辞書で調べると「共謀」は犯罪を示す例しかない
- 二人が決闘を計画したら「共謀」なの?
- 実際に共謀罪を取り締る場合には盗聴などの共謀した証拠を売る方法が必要になる
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※ 【追記】ホワイト・ボードの写真につきまして(下段参照) |
ちなみに「決闘」については、明治22年制定の「決闘罪ニ関スル件」という法律があり、現在も取締りの対象なっている。
そんな中、「共謀」とはどのような性質のものなのか、ということに着目するような提案も。
- 「共謀」とは、第三者の耳や目がが介在することによってはじめて成立するのではないか。
- 「共謀」を行ったとされた者達とそれを共謀であるとジャッジした者は、立場がハッキリと違う。前者はこれから行おうとする行為にが正義であると考えているのに対し、後者はそれを悪事だと考える。同じ事柄についての見方が正反対。
「共謀」というものに関わる者の感じ方がその関わり方によって様々に違っているのではないかという視点は、なかなか興味深いものと思われた。
その後、話題は犯罪の共謀や未遂との違いといった問題に。
共謀をもちかけられても、単に返事がない場合はどうなのか。共謀する際に意思の強さをどう計るのか。
そういったことのいちいちが曖昧で、際限がなく様々に解釈できてしまう考えが述べられた。
キーワードとして挙げられたのは次のもの。
- 2人以上(あるいは被害者も入れて3人以上)
- 正義/悪・合意/未遂・共謀=意思疎通・目的 「共謀」の成立要件として
- 秘密の共有・意外性 情報の格差
- 関係性・首謀者/協力者
「意外性」というのは、共謀を持ちかける際に、持ちかける者と持ちかけられる者との間には、多くの場合、圧倒的な情報の格差があるのではないかということだった。
「共謀」という言葉には、何か未知なるものに挑むような魅惑的な響きがあるようにも感じる。
情報格差があることによって、話を持ちかけられるものは「ワクワク」を感じることもあるのではないか、ということであった。
なかなかにおもいしろい考えだと感じた。
こうした話を受けながら、今回の対話は次のような問いと答で締めくくられた。
問 <共謀>するって、どんなこと?
答 2人以上が正義または悪の目的の達成のために意思疎通をし合意/または未遂に至ること。
その際に共謀者と被共謀者との間に情報格差を作ることで快楽を得ることもある。
今回の対話においては、時宜と状況ゆえか、やはり政治的課題であるところの「共謀“罪”」への関心からなかなか脱することができず、「そもそも共謀するとはどういうことなのか」といったことについて充分に話しを深めることができなかったように感じた。
情報格差ゆえの「快楽」という視点は大変興味深いものだと感じたが、あるいは「共謀者」と「被共謀者」という立場の違いにいま少し着目して考えれば、より思考を深めていくことができたかもしれない。
時間の延長の後、第13回波戸場てつがくカフェは幕を閉じた。(了)
※ 【追記】ホワイト・ボードの写真につきまして
本報告記事中に掲載しておりますホワイトボードの写真につきましては、一部、文字の消去を行った箇所があります。
なぜそのような編集・加工を施したのか、以下、ご説明を申し上げます。
当日対話の最中、ある参加者の方より、「共謀と陰謀」ということについて、過去に「陰謀」をめぐらしたことのある集団の例として「大日本帝国」「コミンテルン」という例が挙げられました。
しかし実際にはそれ以外にもうひとつ、ある名称が例として発言されました。
「大日本帝国」と「コミンテルン」は国家権力と言える存在であるのに対し、もうひとつの例はそのような性質のものではありませんでした。
当然のことながら、ひとりの参加者の方の発言が会場全体の意見を代表するものではありません。
しかし、「陰謀」をはたらく集団の例としてその名称が、「大日本帝国」と「コミンテルン」と同様の次元のものとして記されることは、概念の取り扱いとして適切でないというだけではなく、事実に基づかない誤解や偏見を生み、増長させる可能性があると当会は考えました。
よって上記の言葉の部分につきましては消去の加工を施した上で、ホワイトボードの画像を掲載するものといたしました。
当会は、全ての人間が対等に、自由に対話することができる場を追究することを目的として活動しています。
残念ながら今回、当会は自らの理念に反する事態に陥ってしまいました。
今回の事態を反省し、今後同様の轍を踏まぬよう精進して参りたいと存じます。
以上、ここに釈明と反省の辞を述べるとともに、皆さまへのご報告とさせて頂きます。
***
・日時:4月23日(日)15時30分~
・場所:Necco カフェ 東京都新宿区西早稲田2-18-21 羽柴ビル202
・ 参加費:無料(ワンドリンク注文・200円~)
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※「本レポートは対話の場の主催者として掲載するものですが、報告者の個人的見解を前提としています。種々の制約によりラフな記録と記憶をたよりに作成されているため、現になされた対話の事実と食い違うところがあるかもしれません。何卒ご承知おき頂きたく、お願い申し上げます。