【報告】第8回「<台所>の安全性」とは何か?

【報告】第8 回波止場てつがくカフェ「<台所>の安全性」とは何か?


小池新都知事による豊洲移転の延期が宣言され、築地市場の問題に関心が集まった9月。

第8回波止場てつがくカフェは、「『<台所>の安全性』とは何か?」とのテーマで開催されました。

参加者からは、次のような意見。

  • 特に都市部で顕著だが、台所はもう「調理」の場ではなくなっている
  • 台所には、「場所」としての側面と「機能」としての側面があると思う
  • 世代によって台所の使い方が違う
  • 「家庭料理」というが、「家庭料理」というジャンルになってしまっている。もはや「調理」という文化は継承されていないのではないか?
  • 共働き世帯が増えるなど、家族形態の変化が「台所」にも影響していると思う
  • 「台所像」が、古い家族モデルに負っているのではないか
  • バブルの頃は外食文化がもっと旺盛だったが、今は反動なのか、お金をかけずに食事をつくることがトレンドに自己表現の手段としての調理がかなり一般化した結果、調理が「リア充」アピールの場となり、「調理のエンタメ化」が進んでいる
  • 食の安全性が気になる
  • 家事など、台所自体の安全性が気になる
  • 台所は「調理場」とは違うのではないか

色々な角度から意見が述べられた後、話は台所の置かれている社会的な「位置」、「役割」に関心を移ったたように思われました。

  • 台所は調理場と異なり、「家庭」が前提となって成り立っているのではないか?
  • 「築地市場」などを「台所」というが、家庭にある台所とは本質的に意味が違うのではないか
  • 台所の安全は、「母親の愛情と責任」で保たれるとされてきた
  • 台所も調理場も、ともに「命をつなぐ場」である
  • 現代では大手のスーパーやコンビになど、多くの食品が築地などの卸市場を通さずに流通している。原産地や加工流通経路が不明な食品を大量に消費しているのに、どうして築地の安全性ばかりに過剰に注目が集まるのかが不可解。
  • 台所は女性解放の場
  • 技術革新によって女性が台所仕事から解放された結果、「エンタメ」として楽しめるようになったのでは?
  • 「調理」というものが消えたなら、「専業主婦」の存在理由がなくなるのではないか。「女性」の居場所がなくなる、ということにもなり得る。

「台所」や、その「安全性」を巡って話はかなり広がりと充実を見せましたが、キーワードを出して問いをつくる段になって、それまでのペースは少しダウン。

キーワードとしては、以下のものが提出されました。

  • 多様化
  • 情報の連続性(安全性を保障するもの)
  • 家庭の要
  • 幸福の象徴
  • 愛情責任(あるべき台所の姿)
  • 食に対しての無関心
  • 台所の不要

「問い」を設置するのは非常に難航しました。

とにかく一つ何か立ててみようということで、話の中で提案のあった「台所はどこにあるのか」と設問してみることに。

しかし対話は「台所」をどのように定義づけるのかを巡って、またしてもデッドロックに近い状態になりました。

提案された定義づけは以下。


「台所」の定義

  • 食材を加工できるところ
  • 食べる直前の「エンド」
  • 男女平等を目指す場
  • 食材を「料理」にるするところ


ファシリテーターとしては、なんだかこれまで積み重ねられてきた様々な「台所」についての見解が反映されていないような感じがしました。

「台所」というものが、「食材」や「料理」という概念と因果付けられてはいますが、単に実用の面から因果の説明がされているだけと感じます。

なんというか、「食材」や「料理」「食べる」という概念を丸ごとに明らかにしてみせるような「見通し」を感じられないように思うのです。

一方、「食べる直前の「エンド」という定義は大変におもしろいと感じますが、その場合は「台所はどこにあるのか」という設問そのもの、わけても「どこに」という部分について、問い直す必要がありそうです。

弱ったなぁ、というのが正直なところでしたが、会場の解を出さんとする精神力に助けられ、ひとまず以下のような解が提案されました。

問い 「台所」はどこにあるのか?

 従来の概念では家庭を核として料理を供する場であった。しかし現在、社会の変化や家庭の機能の
      変化に伴って、従来の台所に留まらないものになっている。


大変に刺激的な見解が提出された対話であったのですが、ファシリテータとしては、それを順調な設問へとナビゲートできなかったと思い、悔いを感じています。

問題のひとつは、見解の相違点をあぶり出し、それをクリアーにさせることに不十分であったことではないかと感じています。

大いに反省し、今後の課題としたいと思います。

とはいえ、様々な見解が活発に出され、大変刺激的な対話をもつことができたと思います。

参加された皆様、お疲れ様でございました。


■第8回波止場てつがくカフェ 「<台所>の安全性」とは何か?
■日時:2016年9月25日(日)16:30~
■場所:カフェ・エクレシア銀座店(東京都中央区銀座1-24-5)
■参加費700円(ワンドリンク付き)


※「本レポートは対話の場の主催者として掲載するものですが、報告者の個人的見解を前提としています。種々の制約によりラフな記録と記憶をたよりに作成されているため、現になされた対話の事実と食い違うところがあるかもしれません。何卒ご承知おき頂きたく、お願い申し上げます。